事例報告① 日本水産株式会社のシニア職員制度

講演者
小西 敦美
日本クッカリー株式会社人事労政部担当部長
フォーラム名
第90回労働政策フォーラム「生涯現役社会の実現に向けて─高年齢者の活用の実態と課題─」(2017年3月21日)

3月1日から日本クッカリーという会社に出向していますが、本日は長年勤務していた日本水産の制度をご説明させていただきます。

当社(日本水産)では、かつての基幹事業であった遠洋漁業が終焉し、現在は「水産資源」のサステナビリティの実現を基本に、加工食品、冷凍食品、医薬品、調味料、物流事業等に領域を拡大し、2011年の創業100年を経て、グローバル化を推進しています。

従業員数は単体で正社員が1,116人、非正規社員が1,257人で計2,300人程度の規模です。平均年齢は42.41歳。最近は中途採用の人も増えていますが、正社員の半数近くを45歳以上が占めています。従いまして、あと10年もすると60歳前後の層がかなり厚みを増していきます。

「シニア職員制度」に役職定年制を導入

当社の高齢者の継続雇用については、定年後の再雇用制度(=「シニア職員制度」)を導入しています。同制度では、60歳定年を過ぎても管理職になる「シニア幹部」と、一般職の「シニア一般」に分かれ、雇用形態はいずれも1年間の契約職員です(図表1)。

図表1 シニア職員制度(定年後再雇用制度)

図表1画像

参照:配布資料3ページ(PDF:738KB)

2002年に現役(定年前)社員の人事制度の改定を行い、職務等級制度を導入しました。その4年後の2006年に改正高年齢者雇用安定法が施行され、65歳までの継続雇用が義務付けられました。年齢にかかわりなく、仕事を基準に処遇するという職務等級制度をシニア職員にも導入した結果、当時のシニア職員制度は運用上、60歳を過ぎても部長や課長がいました。つまり、60歳になる月の終わりに定年退職し、翌月からシニア職員として再雇用される契約社員でありながら、部長や課長として以前と同じ処遇を受けていた──。これでは従来と何も変わっていないということで、その運用を見直し、60歳で全員退くようにしました。ただ60歳を過ぎて突然、「今日で部長は終わり。明日から平社員です」と言われても難しい。そういうこともあり、最近、役職定年制を導入したところです。そういう意味では、当社のシニア職員制度は、契約社員としての再雇用に、併せて役職定年制を導入しているのがポイントだろうと思います。

定年前の等級と連動しない「洗い替え方式」

シニア職員には、従来の「職務等級」制度に基づき職務等級基準で処遇しています。各等級の給与は一本(シングルレート)になっており、一番下の等級であれば最低賃金程度しかないというかなり厳しい仕組みになっています。

「職務等級」は本人が担う仕事に紐づいているのに対し、2015年度から現役社員に適用している「役割等級」は仕事内容が多少変わっても役割は変わらないという点で異なります。職能資格的な運用と言えるでしょう。シニア職員制度では、現役時代の等級を定年退職時に全てご破算にし、担当職務の価値算定をして新たな格付けを行います。つまり、定年前の「役割等級」とシニア職員の「職務等級」は連動しない(洗い替え方式)ことになります。職務等級の格付けは、次の職場の上司が職務価値算定を行い、それを人事部が承認する形で決まっていく。具体的には、職務価値を判定する質問シートがあり、上長が点数をつけ、その合計点に応じて等級が決まったら、人事部がもう一度上長にヒアリングをして最終決定する方式をとっています(図表2、3)。

図表2 シニア職員制度(定年後再雇用制度)

図表2画像

参照:配布資料4ページ(PDF:738KB)

図表3 シニア職員職務等級基準

等級 定義
シニア幹部 SA1 業界でも第一人者として認知されるレベルの高い専門性を必要とし、会社全体に影響を与える新しいビジネスモデルや事業の変革を生む職務を行う者
SA2 業界でも有数と認知されるレベルの高い専門性を必要とし、会社全体に影響を与える新しいビジネスモデルや事業の変革を生む職務、または経営からの重大な特命的職務、部署長の戦略立案・実行管理および部署における付加価値創造・人材育成のサポートを行う者
SA3 対外的にも知られるレベルの高い専門性を必要とし、事業全体に影響を与えるビジネスモデルの変革や事業の変革を起こす職務、または経営からの特命的職務、部署長の戦略立案・実行管理および部署における付加価値創造・人材育成のサポートを行う者
SA4 対外的にも知られるレベルの高い専門性を必要とし、事業全体に影響を与えるビジネスモデルの変革や事業の変革を起こす職務、または部署長からの特命的職務、各課長の実行計画の遂行および各課における付加価値創造・人材育成のサポートを行う者
SA5 社内トップクラスの専門性を必要とし、部署全体に影響を与えるビジネスモデルの変革や事業の変革を起こす職務、または各課長からの特命的職務、課としての実行計画の遂行および付加価値創造・人材育成のサポートを行う者
シニア一般 SS1 課内の業務全般のフォロー、自身の知識技能による恒常的な改善および関係メンバーの指導を行う者
SS2 担当分野における専門知識を必要とする、課内の一定範囲の業務および関係メンバーのサポートを行う者
SS3 一定の専門知識・技能を必要とする課内担当業務または定型的な業務を行う者
SS4 上記にあてはまらない軽微な業務を行う者(短時間勤務)

参照:配布資料5ページ(PDF:738KB)

これらの方式を導入すると、処遇(給料)は一定年齢まで上がっていきますが、役職定年制が56~58歳で適用されますので、実際には55歳を過ぎる頃から下がるような運用になります。

8割が「シニア職員」を希望

2013年度以降の状況をご紹介しますと、シニア職員を希望する人が約8割、希望しない人が約2割です。そして希望者の7~8割が従前の職場を希望し、2~3割はグループ会社等への転籍を希望しています。

また、65歳以降については、22人の社員が引き続き勤務しています。冒頭、非正規社員が1,200人ほどいるとご紹介しましたが、そのうちの138人(22人含む)が60歳以上の社員です。

ニッスイに在籍していた頃、各工場から「なかなか人が集まらないので、65歳で辞められたら困る。68歳でも70歳でも元気で働けるならいいじゃないか」という話をよく聞かされていました。このように、好むと好まざるとにかかわらず、必然として70歳や生涯現役という問題を真剣に考え、受け入れていくことになるのではないかと思っています。

企業も個人も時代と向き合う覚悟が必要に

当社の今後のことを考えると、年齢にかかわらず人材を活用していく覚悟と、その仕組みを再構築していくことが求められると思います。その時にポイントとなるのが、55歳時点でのキャリア選択です。60歳で辞めるのか、シニア職員として残るのかを考えて行動に移す。こうした仕掛けを定年間際でなく、早めの段階で設けて、自身の会社人生におけるキャリアの棚卸しや、これからの人生設計を考える機会を与えることが重要です(図表4)。

図表4 55歳からのキャリアプランと報酬イメージ

図表4画像

プロフィール

小西 敦美(こにし・あつみ)

日本クッカリー株式会社人事労政部担当部長

1984年日本水産株式会社入社。東京と仙台で家庭用冷凍食品の営業を通算9年経験後、人事部に異動、「労政」「福利厚生」「人事企画」を主に担当。99年から「21世紀型人事制度PJ」に参画。処遇の基準を「職務」とする「職務等級制度」を2002年に導入。「職務給」の定着を進めるなか、06年に市場価値を意識した「職務型」の『シニア職員制度(再雇用)』を導入。自身の「シニア職員化」が目前に迫る中、本年3月1日からCVSの惣菜を製造する子会社の日本クッカリーに出向し、日夜、人材確保とその定着と育成に奔走している。

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