事例報告② 生涯現役社会の実現に向けて──『中高年齢者の活躍推進』の取組み

講演者
立花 一元
損害保険ジャパン日本興亜株式会社人事部ライフデザイングループ主査
フォーラム名
第90回労働政策フォーラム「生涯現役社会の実現に向けて─高年齢者の活用の実態と課題─」(2017年3月21日)

当社は来年で創業130年を迎える損害保険会社です。金融保険業界は合併が激しく、当社は、2014年9月に損保ジャパンと日本興亜損保が合併して発足しました。また昨年10月、グループの持ち株会社の商号を「SOMPOホールディングス」に変更し、現在、中核会社として損保ジャパン日本興亜が位置づけられています。

本日のテーマは「生涯現役」ですが、高年齢期に至るまでの人たち、すなわち中高年社員の問題も企業としては重要だと考え、地道に取り組んでいく問題だと認識しています。

ダイバーシティの推進で女性管理職を3割に

中高年対策に関連する取り組みを2点ご紹介します。1点目は、経営戦略の重要な柱の一つにもなっている「ダイバーシティの推進」です。「Diversity for Growth」(=多様性を企業の成長につなげていく)というスローガンの下、全社員で取り組んでいるところがポイントです。

損保に共通する特徴として女性比率が高いことが挙げられ、当社でも女性が55%を占めています。そのうえで、当社の女性管理職比率は、2016年7月時点で12.3%(240人)となっていますが、「2020年度末30%達成」を目標に掲げて取り組んでいます。そして男女ともに働き方の改革にチャレンジする「ワークスタイルイノベーション」を掲げ、多様な働き方を全職場、全社員で推進しています。

働き方改革の推進で生産性向上を

2点目は「働き方改革の推進」です。社員が健康でなければお客さまに安心・安全・健康は提供できないという視点からも、働き方改革を進めています。このため、時間と場所に捉われない柔軟な働き方の実践により、時間あたりの生産性を高め、多様な人材が活躍できる環境・制度を整備しています。

OB・OGと現役が一体となった企業文化づくりを

次に、人事部ライフデザイングループの業務を簡単にご紹介します。主な業務は、①35歳から60歳までの社員に対する「ライフデザイン研修」の企画・運営、②特別退職制度──定年前に社外に転職する社員をサポートする制度──の推進・運営、③OB会(社友会)事務局の運営、④中高年齢者対策の企画・推進です。③に関しては、前述のとおり2014年9月に会社が合併し、それに伴い2社の社友会も統合しました。現在、当社の社友会には9,000人を超えるOB・OGがおられます。社友会は当社とは別組織ですが、生涯現役という観点からも、現役と一体感を持った運営をしており、そうした企業文化をつくり続けていきたいと思っています。

中高年社員の自律的なキャリア形成に向けて

中高年齢者の取り組みの全体像はのとおりです。キャリア形成を支える柱が人事制度ですが、一言で言うと、「知る」ことが重要だと思います。現場に長くいると人事制度を十分理解していないこともあります。従いまして、正しく理解させることが人事部の大切な仕事の一つだと考えています。職務開発については、今後、社員も自分の生きる場所を自分自身で探していく必要性が高まっていきますので、活躍の場を探索し、会社も提供していくという意味から、「つくる」というキーワードで括れるかと思っています。3番目の研修は、マインドセットやモチベーションの向上を目的に実施するもので、「学ぶ」というキーワードが当てはまります。これらの三つのトライアングルをうまく進めていくことで、社員が主体的に行動し、自律的なキャリアを形成して成長することに寄与していこうと考えています。

図 中高年齢者への取組み~全体像~

(1)人事制度(キャリア形成を支える柱)
(2)職務開発(活躍の場の探索・提供)
(3)研修(マインドセット モチベーションアップ)

参照:配布資料9ページ(PDF:1.21MB)

「ライフデザインシート」で進路を考える

当社の人事制度をご紹介しますと、2010年に「コース別人事制度」を廃止しました。男女を問わず誰もがあらゆる業務を担い、部店長、役員までチャレンジできる制度になっています。そのなかで、国内外問わず転居・転勤のある「グローバル」と、転居・転勤がない「エリア」という二つの職種を設けています。

次に、評価やキャリアに関する制度についてご紹介します。仕事を評価する「目標設定シート」と行動(能力の発揮度)を評価する「自己チェックシート」があり、この二つが評価の軸になります。年度当初、中間、年度末など定期的に上長と面談し、フォローします。再雇用の社員も含め全従業員が対象になります。

キャリアに関しては、中長期のキャリアビジョンなどを記入する「マイキャリアプラン」と、定年を見据えた進路を考えるための「ライフデザインシート」があります。前者は65歳までの全社員が対象で、後者は42歳以上が対象。「ライフデザインシート」の記入に当たっては、前述の特別退職制度を利用するのか、65歳までの雇用を希望するのかといった進路決定に関わる具体的な内容も想定され、毎年作成のうえ、上長との面談が義務化されています。

特別退職制度と再雇用制度

先ほどご説明しましたとおり、当社では多様な働き方を推進しています。具体的には、全社員を対象としたテレワーク(在宅勤務など)や、9パターンから選択が可能なシフト勤務、不妊治療や資格取得時などに利用できる「ライフ&キャリア応援休暇」、そして介護休業の取得回数の拡大についても法改正に先立って実施しています。

中高年齢者を対象とした制度には、前出の「特別退職制度」や、再雇用制度があります。特別退職制度は、60歳定年まで、会社が転籍先との給与の差額を保障しながら外部の活躍の場を提供する仕組みです。当社は代理店や取引先等への転籍を条件に、最長2年間のなかで出向期間を設け、転籍後はその会社の社員になって65歳まで勤務できる雇用環境を提供しています。もう一つ、業界団体への転籍もあります。こちらは公募した人材を人事部が推薦したうえで業界団体の試験に合格する形で、65歳定年制になっています。55、56歳をピークに毎年100人前後の社員が特別退職制度を活用して社外に転籍しています。他方、再雇用者は定年退職者の約6割を占め、最近は女性の再雇用率が上がっています。再雇用制度では、60歳を超えて満65歳年度末まで1年更新です。再雇用者の給与は、三つのテーブル体系があり、評価結果により毎年増減します。

「ジョブ・チャレンジ制度」で職務開発を

中高年齢者の活躍フィールドを拡大させるために、特別退職制度を運用したり、社内でも仕事の開発などに取り組んでいますが、昨年、「ジョブ・チャレンジ制度」を導入しました。これは、中高年齢者のポストを追加し、自らの意志で応募する自己選択型の社内公募制度です。まだスタートしたばかりですが、内部監査、事故対応やコールセンターのオペレーター育成、法務などで活躍している社員もおり、積極的なキャリア形成や能力開発、専門性強化に取り組めると考えています。

「ライフデザイン研修」で自己理解を深める

35歳から60歳までを対象とした「ライフデザイン研修」は、年代別に3グループに分け、希望者を募り2泊3日で開催しています。各回の定員は50人。人生の三大不安である貧困、病気、孤独といったリスクをマネジメントするために、経済(マネー)、健康(心身)、生きがい(ライフ、キャリア)に関するテーマでプログラムを組んでいます。研修を受けることで、自分の強みを発見したり新たな気づきが得られ、これからの「ライフとキャリア」のプランを作成できるようになることが目標です。

プロフィール

立花 一元(たちばな・かずもと)

損害保険ジャパン日本興亜株式会社人事部ライフデザイングループ主査

1975年安田火災海上保険(株)入社。営業部門・営業推進部門の部支店長などを歴任し、2007年人事部ライフデザイングループリーダーに着任。2013年定年退職後も同グループの再雇用嘱託として勤務、現在に至る。同グループでこれまで、中高年齢者を対象とした「研修の企画・運営」「活躍のための制度の推進・運営」及びOB会(社友会)事務局のサポートなどに通算10年間従事。2級キャリアコンサルタント技能士(国家資格)、シニア産業カウンセラー、健康管理士一般指導員・健康管理能力検定1級、AFP(日本FP協会)、JADA主任講師・同上級生涯生活設計コンサルタント。

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