労働政策研究報告書 No.150
出産・育児と就業継続
―労働力の流動化と夜型社会への対応を―

平成24年4月20日

概要

研究の目的と方法

出産・育児期の就業継続を支援する目的で1992年に育児休業法が施行されてから今日に至る20年間に、育児休業制度の規定を就業規則等に設ける企業は増え、女性の育児休業取得者も増えた。にもかかわらず、多くの女性が出産・育児期に退職する状況は変わっていない。その要因を明らかにするため、当機構では平成19年度~平成23年度のプロジェクト研究「多様な働き方への対応、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の実現に向けた就業環境の整備の在り方に関する調査研究」のサブテーマとして、「就業継続の政策効果に関する研究」を実施した。その最終とりまとめである本報告書では、全国30~44歳の女性を対象に当機構が実施した「女性の働き方と家庭生活に関する調査」(2010年)の経歴データを用いて、第1子出産・育児期とその前後の職業経歴を分析した。

主な事実発見

  1. 100人未満の小規模企業や、非正規労働者では、今日でも育児休業制度や、その前提となる産前産後休業(産休)制度が勤務先にないことによって就業継続が困難になっている。だが、小規模企業では、労働者個人に向けた両立支援情報の提供によって妊娠・出産期の退職率は下がる可能性がある。一方、第1子妊娠時に非正規労働者の約7割は初職が正規雇用であり、初職後の非正規化が女性全体の退職率を上げている。
  2. 第1子妊娠前に初職を辞めて勤務先を移った正規労働者の4割以上が非正規雇用として妊娠・出産期を迎えており、育児休業制度のある勤務先に正規雇用で移動する割合は低い(図表)。その傾向は初職に育児休業制度がない場合に顕著だが、近年は育児休業制度が「ない」勤務先から「ある」勤務先に正規雇用で移動する割合も上昇しつつある。
  3. 妊娠時の所定終業時刻が午後6時以降の場合、妊娠・出産期の退職率が高くなるだけでなく、出産後に復職してからの育児期にも少しずつ退職する。だが、勤務先の短時間勤務制度や、家族の保育所送迎支援がある場合は退職率が低下する。就業時間帯がさらに遅い深夜業は出産自体の阻害要因になっており、出産選択に対する育児休業制度の効果は深夜業の拡大によって相殺されている。

図表 第1子妊娠時に正規雇用かつ育児休業制度があった割合
―初職企業規模・雇用形態・育児休業制度有無別―(第1子妊娠前転職者)

図表画像

政策的含意

出産・育児期の就業継続支援の柱である育児休業制度が普及し、育児休業の取得者が増えている今日でもなお、多くの女性が出産・育児期に退職する要因として、若年労働力の流動化と夜間勤務の拡大を分析結果から指摘することができる。そして、この2つの要因に対応した支援として、次のような施策が重要であることを分析結果は示唆している。

  1. 流動性の高い労働者においても出産・育児期の就業継続が拡大するために、両立支援の取組みを企業に促すことだけでなく、労働者個人に向けた両立支援情報を充実させること
  2. 家庭生活との両立の観点から夜間勤務のあり方を見直すことに加えて、保育所の送迎支援を強化する観点から夫の育児参加を推進すること

このような意味で働き方の多様化に対応した両立支援の推進が、さらなる就業継続の拡大に向けた課題であるといえる。

政策への貢献

出産・育児期の就業継続支援策や少子化対策のあり方を検討するための基礎資料となりうる。

本文

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研究期間

平成19~23年度

随筆担当者

池田心豪
労働政策研究・研修機構 副主任研究員
高見具広
日本学術振興会 特別研究員

入手方法等

入手方法

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お問合せ先

内容について
研究調整部 研究調整課 03(5991)5104
ご購入について
成果普及課 03(5903)6263

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