労働政策研究報告書 No.159
子育てと仕事の狭間にいる女性たち
―JILPT子育て世帯全国調査2011の再分析―

概要

研究の目的と方法

日本の育児期女性の職場進出が、戦後初期から1980年代にかけて大きく伸びたものの、1990年代以降はその伸び率が鈍化している。本報告書は、JILPTが行った最新の調査データに基づき、育児期女性の職場進出のスピードがなぜ鈍化してきたのか、母親の就業は子どもにどのような影響を与えるのかなどについて、育児期女性の職場進出における最新事情をまとめた。

主な事実発見

中国や米国に比べ、日本の育児期女性の職場進出はまだまだ伸びる余地がある。しかし、それはいくつかの高いハードルの克服を前提としなければならない。育児休業制度のさらなる充実、待機児童の多い都市部での保育所整備や、夫や祖父母の家事・育児援助の確保策等を講じることが引き続き必要だが、それだけでは不十分である。「男女役割分業の慣習」と「日本的雇用慣行」という古い均衡状態を打破し、「夫婦共働き家庭」と「男女雇用均等」が結び付く新しい均衡状態を作り出さなければならないと考えられる。

育児期女性の職場進出は、児童に負の影響を与えることが懸念されているが、本報告書の分析によると、そのような心配には合理的根拠が見当たらない。むしろ母親が外で働いた方が、子どもの自立性を高める効果が期待できる。また有業母親の家庭では、子どもへの学習塾等教育投資が多く(図表1)、子どもの健康状態や学業成績も良い傾向を示している。すなわち、育児期女性の職場進出は、日本のGDP増大につながるだけではなく、子どもの視点からみてもメリットが多い。

とはいえ、シングルマザーの場合、職場進出の是非についてより多角的な視点が必要である。シングルマザーは、経済的理由により職場進出の必要性が高いが、一人二役で子育てもしなければならず、既婚女性に比べて精神面と身体面で厳しい状況に置かれている。こうしたシングルマザーにとって、職場進出だけでは貧困からの脱出が難しく、児童扶養手当をはじめとする公的支援の継続、離別父親から養育費徴収の強化も重要である。就業はシングルマザーの(精神的)ディストレスをさらに高めたのではないかと懸念されたものの、影響がないことも実証分析で明らかになった。

図表1 母親の就業状況と子ども費、塾・習い事比率(子どもが1人の世帯に限定)

図表1画像

注:子ども費には、食費、被服費、学費、保育料・幼稚園月謝、習い事・塾代、医療費、娯楽費が含まれている。

政策的インプリケーション

育児期女性の職場進出を促進するためには、育児休業制度のさらなる充実、待機児童の多い都市部での保育所整備や、夫や祖父母の家事・育児援助の確保策等を講じることが引き続き必要である。

政策への貢献

本研究成果は、女性の活用と子育て支援の基礎資料としての活用が期待される。

本文

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研究の区分

プロジェクト研究「企業の雇用システム・人事戦略と雇用ルールの整備等を通じた雇用の質の向上、ディーセント・ワークの実現についての調査研究

サブテーマ 「女性の活躍促進に関する調査研究プロジェクト」

研究期間

平成24年度

執筆担当者

周 燕飛
JILPT 副主任研究員
馬 欣欣
京都大学薬学研究科助教
阿部 彩
国立社会保障・人口問題研究所部長
大石 亜希子
千葉大学法経学部教授
坂口 尚文
公益財団法人家計経済研究所次席研究員
James Raymo
ウィスコンシン大学マディソン校社会学部教授

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研究調整部 研究調整課 03(5991)5104
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