労働政策研究報告書 No.200
キャリアコンサルタント登録者の活動状況等に関する調査

平成30年3月16日

概要

研究の目的

2016年4月の国家資格化に伴い、キャリアコンサルタントに対する社会的な期待は大きく高まっており、各方面でキャリアコンサルティングの一層の普及促進が求められている。これまでキャリアコンサルタントの活動状況等に関する実態調査は数年ごとに過去3回(2006年、2010年、2013年)行われてきたが、ここ数年は調査が実施されておらず、国家資格化以降の実態把握は十分に行われていない。そこで、本研究では、今後、キャリアコンサルタントがよりいっそう確立された専門家として発展し、キャリアコンサルティングがクライエントに利用されやすい社会的インフラストラクチャーとなることを目指すべく、国家資格キャリアコンサルタントを有している者を対象にアンケート調査を実施し、キャリアコンサルタントの働き方や活動内容等について実態を把握し、その現状と課題を明らかにすることを目的とした。

研究の方法

(1)調査対象

特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会(キャリアコンサルタント指定登録機関、以下協議会)に登録済みのキャリアコンサルタントのうち、協議会が提供しているメールニューズサービスに登録している者15,962名。

(2)調査方法

協議会に登録済みのキャリアコンサルタント(以下、登録者)に対して、電子メールを通じて、専用調査用サイトのリンク先を連絡。登録者はインターネット上の当該サイトで調査に回答。調査期間は、2017年6月30日~2017年7月31日であった。

(3)回収数

3,273通(回収率20.5%)

主な事実発見

  1. キャリアコンサルタントは、現在、都市部、大企業、40代以上の中高年者層に多いことが確認された。また、キャリアコンサルタントの活動領域として企業は重要な位置づけを占めているが、企業・学校・需給調整機関・地域の4領域以外のその他の領域(医療施設、福祉施設、自治体等での活動)にも広がりを見せていた。
  2. キャリアコンサルタントが受け持つ「難しい相談」について検討を行った結果、「難しい相談」は、就職・転職支援やキャリア開発のような通常の相談場面に発達障害やメンタルヘルス不調を抱える相談者が訪れることによって生じていた。今後は、専門外の対応が求められる相談であっても、適切な専門家と連携を図って相談者を支援できることが求められることが示された。
  3. キャリアコンサルタントとして現在、活動していない回答者(休止者)を対象に、その理由の検討を行った。その結果、休止者は、おおむね活動の希望を持ちながらも周囲に仕事(ニーズ)がないために、やむを得ず休止していることが明らかになった。休止者は、休止している現状に満足をしておらず、活動開始(再開)に強い意向を持っていた。一方で、休止者は、活動を開始(再開)しようにも経験不足によって開始(再開)できない面があることが示唆された。
  4. キャリアコンサルタントとしての能力の維持・向上のために行っていることで多かったのは「相談実務の経験を積む」と「キャリアコンサルティングに関する研修会・勉強会等への参加または実施」であった。なお、キャリアコンサルタント同士の情報交換や交流のネットワークについては、「特に情報交換や交流のネットワークはない」が約1/3を占めており、今後は新たな方法によるネットワーク形成の仕組み作りが期待された。
  5. キャリアコンサルタントとしての活動に対する満足度は、活動を行っている頻度と資格が役立っていると認識する程度で説明することができた。一方、活動領域別で満足度には有意差があり、男性は「需給調整機関」が最も高かったが、女性では「地域」が最も高かった。男女共に「企業」の満足度が他の領域と比べて有意に低かった。
  6. キャリアコンサルタント登録者の自由記述の内容を検討した結果、キャリアコンサルタント登録制度の良い点として、「認知度・地位・ステイタスの向上」「安心感・信頼感の増加」「キャリアコンサルタントとしての自覚や自信(が生じた)」「継続的な学習機会の確保」が挙げられた。一方、キャリアコンサルタント登録制度の課題は「社会的認知度の低さ」「活動の機会の少なさ」「更新講習の負担」が挙げられた。今後の推進支援策としては「認知度の向上」「企業等への導入の推進」「多様な対象層への対応」「活動の場の拡大」「情報提供」「研修・スーパーバイズ・交流の機会の提供」が指摘された。
  7. キャリアコンサルタントの活動状況の経年比較を行った結果、①概して企業領域がこの10年で大幅に拡大し、需給調整機関領域(特に公的就労支援機関)が減少していた。②この10年で専任・専業で働くキャリアコンサルタントが減少し、兼任・兼業で働くキャリアコンサルタントが増加した。③取り扱う相談内容は「現在の仕事・職務の内容」「職場の人間関係」「今後の生活設計、能力開発計画、キャリア・プラン等」が増加し、「就職・転職活動の進め方」「将来設計・進路選択」で減少した。④今後の課題として「キャリアコンサルタント」「キャリアコンサルティング」が世間に十分に知られていないという啓発普及の課題が指摘された。

図表1 キャリアコンサルタントの現在の主な活動の場

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図表2 キャリアコンサルタントの主な活動の場の変化

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政策的インプリケーション

  1. キャリアコンサルティングの活動領域は、この10年間で、大まかに「需給調整機関から企業へ」と移行していた。これには、能開法の改正によるキャリアコンサルタントの国家資格化および事業主によるキャリアコンサルティング機会の確保等の明記、派遣法改正によるキャリアコンサルティングの義務化、セルフ・キャリアドック制度の推進など、企業内キャリアコンサルティングを後押しする制度的な環境整備の影響が大きい。キャリアコンサルティング施策のよりいっそうの普及にあたっては、相応の制度的な下支えを要することが示される。
  2. 従来、キャリアコンサルティング施策において地域領域と呼ばれてきた活動領域は、この10年間で医療機関、福祉施設、自治体等の様々な領域に活動を拡大させていた。こうした言わば地域・福祉領域とも言える領域の拡大の背景には、キャリアコンサルタントが有する就労支援・就職支援に係る知識・技能が各方面で求められ、有効に活用しうるという実態がある。今後、キャリアコンサルタントの普及にあたっては、各方面へ進出するキャリアコンサルタントの活動を側面的に支援する方策を検討したい。
  3. キャリアコンサルティングの現場における新たな課題として発達障害等への対応の困難が各領域で一様に指摘された。これは困難な対象層に対して具体的かつ明確な指針がなく、適切な制度的・政策的な支援がない場合、第一線で活動するキャリアコンサルタントは著しく問題を抱えることを示すものである。こうしたキャリアコンサルティングの現場で課題となっている事項については、今後も適切に方向性を示す必要がある。
  4. フリー・自営で働くキャリアコンサルタントが増えていることも重要であり、特に、キャリアコンサルタントとして独立して働きたいというニーズ がみられる。キャリアコンサルタントという職業としての自立性・自律性をいかに考えるかは今後の課題となる。あわせてキャリアコンサルティングの社会的な認知度をあげる啓発普及・情報発信のよりいっそうの拡充、処遇面に対する課題等、中長期的な視野で検討すべき課題が改めて示唆される。

政策への貢献

本研究結果の概要は、厚生労働省「第9回キャリアコンサルタント登録制度等に関する検討会」(2017年12月8日)において報告され、検討会において活用した。今後、キャリアコンサルティング施策を中心に幅広くキャリア形成支援政策(キャリアコンサルティング施策の他、セルフ・キャリアドック施策、ジョブ・カード施策等含む)および職業能力開発政策に資するものと考える。

本文

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研究の区分

プロジェクト研究「全員参加型の社会実現に向けたキャリア形成支援に関する研究」
サブテーマ「労働者の主体的なキャリア形成とその支援のあり方に関する研究」

研究期間

平成29年度

執筆担当者

下村 英雄
労働政策研究・研修機構 主任研究員
高橋 浩
ユースキャリア研究所代表、日本キャリア開発協会理事
前田 具美
特定非営利法人キャリアコンサルティング協議会
新目 真紀
職業能力開発総合大学校 准教授

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入手方法等

入手方法

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お問合せ先

内容について
研究調整部 研究調整課 03(5991)5104
ご購入について
成果普及課 03(5903)6263 

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