資料シリーズ No.169
職業能力の評価―GATBを用いた13年間のデータの検討―

平成28年5月31日

概要

研究の目的

厚生労働省編一般職業適性検査(以下、GATB)の13年間のデータを用いて、中学生から大学生等の高等教育課程在学者までの若年層における職業能力の特徴と変化を検討した。あわせて、20歳代から60歳代の成人のデータを用いて、主に50歳代、60歳代の中高年齢者の職業能力に関する加齢の影響についても検討した。

研究の方法

愛知県の職業相談機関で集められたGATBの実施データのうち、2001年度から2013年度にわたる13年間のデータを用いた。対象者は中学生、高校生、高等教育課程在学者、20歳代から60歳代の成人で、対象者区分ごとに職業能力の特徴を捉えるための分析を行った。対象者区分は大別して次の3つである。①中学校・高等学校等の中等教育課程に在学する生徒(中学生111,675人、高校生119,986人)、②四年制大学、短期大学、専門学校などの高等教育課程に在籍する学生(大学生5,750人、短期大学生8,962人、専門学校生10,643人)、③20歳代から60歳代の成人(20歳代2,421人、30歳代1,215人、40歳代555人、50歳代151人、60歳代60人)。

分析の際には、独立変数として、対象者の性別、学年や年代、所属学科、データが集められた年度等を取り上げ、従属変数としては検査を構成するGATBの15の各下位検査得点および9つの適性能得点(G: 知的能力、V: 言語能力、N: 数理能力、Q: 書記的知覚、S: 空間判断力、P: 形態知覚、K: 運動共応、F: 手腕の器用さ、M: 指先の器用さ)を用いた。

主な事実発見

1.中学生、高校生のGATBの得点からみた職業能力の変化と特徴

  1. GATBの適性能に関して、1983年に集められた規準データと比較した結果、書記的知覚や形態知覚については、直近の2013年度のデータは1983年時点のデータよりも得点が高かったが、知的能力、空間判断力、運動共応は中学生、高校生ともに低くなった。全体として中学生よりも高校生に得点の低下傾向がみられ、高校生では知的能力、言語能力、数理能力も低めとなった(図表)。
  2. 適性能の長期的な得点の推移としては、中学生と高校生で違いがあり、中学生は全体として1983年時点の中学生の適性能の水準と比べて大きな変化は見られなかった。高校生については、書記的知覚、形態知覚、言語能力については平均的な水準が維持されているが、その他の適性能に関しては、平均的な範囲ではあるものの、低めの水準で推移しているものもみられた。特に空間判断力については、近年、一貫して右下がり傾向がみられた。
  3. 高校生の学科(総合・普通科、商業科、工業科、農林水産科)とGATBの適性能との関連をみた結果、どの学科でも一番高い適性能は書記的知覚で、次が形態知覚となった。数理能力や空間判断力はどの学科でも低めとなった。学科の中で全体として得点が高かったのは商業科で、特に書記的知覚の得点が高かった。

2.大学、短期大学、専門学校生のGATBの得点からみた職業能力の変化と特徴

  1. 大学、短大、専門学校のグループでも全体として経年的に高い水準を示したのは書記的知覚、言語能力であった。大学、短大、専門学校生の適性能得点の全般的な水準は高校生の水準よりも高めとなった。
  2. 近年、短大女子、専門学校男女のグループにおいては、数理能力と運動共応に関して適性能得点の低下傾向がみられた。空間判断力についても緩やかな下降傾向がみられた。
  3. 専門学校生の専門分野とGATBの得点との関係を検討した結果、適性能のうち、書記的知覚、言語能力、形態知覚は学科グループによらず、共通に高めの得点を示した。また、学科グループに応じて得点が高くなる適性能に違いがみられた。

図表 中学生と高校生の適性能の得点の変化(2013年の平均値から1983年の平均値を減じた値)

図表画像

注: F:手腕の器用さ、M:指先の器用さについては、他の適性能に比べデータが少なかったのでとりあげていない。

3.成人におけるGATBの得点からみた職業能力の変化と特徴について

20歳代から60歳代までの成人のGATBの適性能得点の水準を検討した結果、紙筆検査と器具検査の両方において加齢による影響がみられ、適性能得点は50歳代、60歳代で低下する傾向があった。他方、20歳代、30歳代と得点がほとんど変わらない適性能もあった。加齢による影響が大きかったのは形態知覚や書記的知覚で、加齢による影響が少なかった適性能は数理能力、運動共応であった。

政策的インプリケーション

若年者から中高年齢者までの幅広い年令層に対し、GATBという同一の規準を用いて測定された長期的な職業能力の変化と特徴を捉えた結果、若年者においては以前に比べて数理能力や空間判断力等の適性能において低下傾向がみられたので、それらの能力水準の推移については今後も長期的な観点から経過をみる必要がある。中高年齢者に関しては、加齢の影響を受けて特に50歳代、60歳代で低下する適性能もあるが、40歳代までとほぼ同じような水準で維持される適性能もあるので、就業継続に向けては、過去の経験を活かして影響を受けにくい能力を使うような職種を選んだり、加齢の影響を軽減できるような条件を検討したりすることの必要性が示唆された。

政策への貢献

GATBは、従来、公共職業安定所等の相談機関での実施の他に、中学校、高等学校の希望校には厚生労働省から無償で配布され、学卒者の職業選択に向けて、活用され続けている検査である。本研究で得られた結果はGATBの信頼性を裏付ける実証的な根拠を示すものであり、あわせて、教育や職業相談の現場においてGATBを解釈する際の資料として活用できる。

本文

本文がスムーズに表示しない場合は下記からご参照をお願いします。

研究の区分

プロジェクト研究「生涯にわたるキャリア形成支援と就職促進に関する調査研究」
サブテーマ「就職困難者等の特性把握と就職支援に関する調査研究」

研究期間

平成24~26年度

執筆担当者

室山 晴美
労働政策研究・研修機構 理事

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