資料シリーズ No.172
中小企業をめぐるヒトの移動概要
―「採用と定着」調査・中間報告―

平成28年5月31日

概要

研究の目的

経済のグローバル化と競争激化が絶え間なく続く中で、今後のわが国経済を考える際、安定的な雇用をいかに維持・増加させるのかは最重要課題の一つである。従業員数の大半を雇用する中小企業が活性化するか否かはきわめて重要である。その効果的な支援を検討するために、人事管理を中心に中小企業の経営の現状を調査する。「中小企業における人事管理」の領域はきわめて広いが、本研究では、今後の労働市場の流動化も鑑み、中途採用を念頭におきながら、人材確保・採用管理を中心に実態を探る。

研究の方法

アンケート調査の実施

主な事実発見

本資料シリーズでは、以下のような知見が得られた。

  1. 新規採用、中途採用、そして、退職の状況をみると、規模別にはより小規模企業で、新規採用ができず中途採用比率が高く、退職率が高い。業種別には新規採用が難しいのが「運輸業・郵便業」、「サービス業」、などであり、中途入職率が高いのは「医療・福祉業」である。「医療・福祉業」では退職率も高い。
    • 企業調査結果を、採用率と退職率から類型化し、検討した。
  2. 創業年が古いほど、タイプⅢ(採用・退職率共に低い)比率が高く、タイプⅠ(採用・退職率共に高い)比率が低い。
  3. より小規模企業でタイプⅠ・Ⅳ(高い採用率)が多く、大規模ではタイプⅢ比率が高い。
  4. 業種では、医療・福祉、生活関連サービス業、情報通信、運輸業でタイプⅠ比率が高い。一方、不動産業、宿泊・飲食サービス業ではタイプⅢが多い。
  5. タイプⅣ(採用率が高く、退職率が低い)が売上高、営業利益で共に「増加」割合が高い。
  6. 退職率が高いタイプ(Ⅰ・Ⅱ)では、相対的に「離職は仕方がない」率が高い。
  7. 人事管理との関連でみると、タイプⅠでは、いわゆる成果主義的管理の傾向が見られる。
  8. 能力開発の責任の所在に関しては、特に情報通信業のタイプⅠ・Ⅱで、個人側との指摘が多い。
    • 従業員調査結果を、仕事内容・業種の異同から転職類型を設定し、検討した。
  9. 「乖離型」(異業種・異なる仕事への転職)では、比較的若く転職回数が少ない層が多い。それまでの経験を活かして転職するというよりも、労働条件の部分に着目して転職している様子が見られる。
  10. 「一致型」(同業種・同じ仕事への転職)は「介護関連、医療関連、IT関係」の従事者が多い。
  11. 転職理由として「一致型・仕事継続型」(同じ仕事への転職)では、「今までの経験が活かせる」や「自分の能力を発揮できる」が多いのに対して、「業種継続型・乖離型」(違う仕事への転職)では、労働条件を理由に挙げる場合が多い。
  12. 異業種からの転職の際には、ハローワークルートを活用したという回答が多い。同業種間の移動では「同じ業界で働いていた人の紹介」が多くなっている。
  13. 現在と一つ前の企業とを従業員規模で比較すると、一致型転職者において100人未満規模のなかで移動しているという比率が最も高い。他方、300人以上の大企業から、100人未満規模の企業に転職してきた比率は、乖離型で最も高くなっている。
  14. 各類型の転職者を採用する企業の中途採用に関する活動・方針を比較すると、一致型採用企業の中途採用は、専門職や中堅管理職など社内に不足する人材の確保を主な目的として行われている。他方、乖離型採用企業では、量的な労働力の確保や、組織の年齢構成の是正が主な目的となっている。

政策的インプリケーション

厳しい競争環境の下、業績の向上と共に働きがいある職場を築こうとする中小企業を、雇用・労働、人事管理の側面から支援する方策について検討するための基礎資料を提供する。

本文

本文がスムーズに表示しない場合は下記からご参照をお願いします。

研究の区分

プロジェクト研究「企業の雇用システム・人事戦略と雇用ルールの整備等を通じた雇用の質の向上、ディーセント・ワークの実現についての調査研究」
サブテーマ「企業経営と人事戦略に関する調査研究プロジェクト」

研究期間

平成27年4月~平成28年3月

執筆担当者

中村 良二
労働政策研究・研修機構 主任研究員
藤本 真
労働政策研究・研修機構 主任研究員

関連の研究成果

入手方法等

入手方法

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お問合せ先

内容について
研究調整部 研究調整課 03(5991)5104
ご購入について
成果普及課 03(5903)6263

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