労働政策の展望
雇用の面からみた社会保障のあり方

西村 健一郎(京都大学名誉教授)

Ⅰ はじめに

編集部から与えられたテーマは「雇用の面からみた社会保障のあり方」というものである。「社会保障」は、通常、一定の社会的事故(老齢、障害、家計維持者の死亡、失業、傷病、労働災害・通勤災害など)が生じた場合の収入・所得(労働者であれば賃金)の喪失・中断、扶養の喪失などに備える制度であり、主として所得保障と医療・福祉サービスの提供をその内容とする[1]。雇用関係が継続している場合もあれば(大抵の疾病の治療の場合)、雇用関係が切断・喪失している場合も少なくない[2]。これに対して、「雇用」は、単純化していえば、労働(稼得活動)による賃金保障であり、多くの人は雇用により賃金を得、自らとその家族の生活を自立的・自律的に賄っている。そのため雇用により賃金が十全に得られている限り、社会保障の所得保障についてはとくに必要がないといえる[3]。その意味で解雇(人員整理、雇止め)からの保護など「雇用」の確保の問題は労働法の重要な課題である。もっとも、非正規雇用が40%を超えている現在、雇用が社会保障、なかでもその中心的な制度である社会保険を支える力はかつてほど強くはなくなってきており、この点が大きな課題であることは否定できない[4]

その一方で、社会保障給付費が、2014年度年間112兆円を超える現在(ごく単純にいえば高齢者に対する年金が54兆円、医療が36兆円、社会福祉・公的扶助などその他の給付費が22兆円である)、制度の長期的・安定的な維持のために、社会保障においても雇用の重要性を再検討する必要性がある。雇用によって生活の自立が実現されるとともに、財源の制約を受ける社会保障給付費の削減・縮小が可能になると思われるからである。

雇用と社会保障の多くの境界線において、どちらの任務分担とするのが適切かは両者の政策判断によるところが大きい[5]。具体的には老齢年金の受給年齢を引き上げれば、雇用の受け持つべき領域を拡大することにつながり、老齢年金の受け持つべき領域は縮小する。この場合、雇用の保障が前提となることはいうまでもない。これは、高齢者が年金を受給しつつ稼得活動に従事する、いわゆる在職老齢年金の問題とも関わる。

本稿では、次の5つの課題にしぼって「雇用」と「社会保障」との関わりを検討してみたい。①医療の面でのリハビリの重要性、②年金の受給年齢、③保育所の整備などの就労支援策、「介護離職」の防止と社会保障、④雇用保険と失業の予防、⑤生活保護における就労支援・自立支援、ワークフェアの5つのテーマである。

Ⅱ 医療とリハビリテーション

リハビリテーション(Rehabilitation)という用語は、障害者の就労に関連して現在ではきわめてポピュラーになっているが、ラテン語の“habilis”(できる、可能である)という言葉に接頭語の“re”(もう一度、再び)が結びついてできたものである[6]。かつては医学的にも事故の被災者・患者・病人をできるだけ安静にしておくのがよいとされたこともあったようであるが、入院によってあっという間に患者の体力・筋力が落ちるのをまのあたりにすると、できるだけ早期にリハビリを始めて、動かしても構わない筋力についてはリハビリにより従前の力を保持することが求められるといえる。このリハビリが有効・効果的に行われれば、身体機能の維持・回復が速やかに行われ、その意味で早期の雇用・就労の再開等に結びつくことになる。その意味で理学療法士・作業療法士等の専門職の果たす役割は大きい。

社会保障の分野では、被災者をできるだけ早期に職場復帰させることが課題となった労災保険・労災補償の領域でリハビリテーションが早くから取り上げられたのは理由があるといえる[7]。わが国の労災保険法を見ると、被災労働者の「治癒」までは休業補償給付(休業給付)と療養補償給付(療養給付)が行われ、治癒した以後は残った障害について障害等級表によって障害補償給付(障害給付)を行うことが規定されているだけで、リハビリについては明文の規定はない。もっとも、リハビリは、現在、「社会復帰促進等事業」(従来の労働福祉事業)の一環としての「療養に関する施設及びリハビリテーションに関する施設の設置及び運営」が、被災労働者の「円滑な社会復帰」の促進のための措置として設けられている(労災法29条1項1号)。したがって、リハビリの重要性は労災保険において十分に認識されていると考えることができる[8]

医療保険においてもリハビリの重要性は認識されているというものの、ここでも法的給付としてではなく、診療報酬点数表の変更という形で医療保険の枠内に取り込まれているに過ぎないともいえる[9]

2000(平成12)年に制定された介護保険法では、施設サービスとしても在宅サービスとしてもリハビリテーションが組み込まれている。たとえば、訪問リハビリテーションについてみると、要介護状態等になった利用者が、できるかぎりその居宅において自立した日常生活を営むことができるように理学療法、作業療法その他必要なリハビリテーションを行うこととされている。通所リハビリテーションの場合も、趣旨は同じである。介護報酬はそれに要する所要時間と要支援・要介護の程度およびリハビリテーションの期間に応じて決定されるが、リハビリテーションの効果自体は理学療法士等の専門家によって慎重に判定する体制が採用されるべきであろう。その意味で、傷病労働者の職場復帰がスムーズに行われるためには、医師、リハビリテーション機関、使用者、さらには復職判定機関の十分な連携が必要である[10]。メンタル不全について行われているリワーク支援(職場復帰支援)の一層の活用も考えられて良い。

Ⅲ 老齢年金の受給年齢

医療保険制度は、医師、薬剤師、X線技師等医療提供側に多くのスタッフが関わり、かつ保険者(支払い側)、被保険者など数多くの利害関係者の利害の調整が難しいが、年金制度自体は、医療保険制度とは異なり、単純な金銭給付であり、誰に・いつから・どれだけの額の給付をすれば良いかが決定されれば良いので、その意味でシンプルな制度であるともいえる。しかし、積立金を保有する場合、人口構造の高齢化に伴って巨大な制度になることは避けられないし、不確定な将来予測に依拠せざるを得ない難点がある。とくに将来的には年金被保険者数の減少と平均余命の伸びをどう評価するかが大きな課題となるが、現在では「マクロ経済スライド」制度で、前者については推計で年0.6%、平均余命の伸びについては、推計で年0.3%、それぞれ年金改定率に反映させて、給付水準を自動的に調整することになっている[11]。もっとも、年金の名目額自体は維持される。なお、給付水準については標準的な年金受給世帯(厚生年金の被保険者として40年間男子の平均的な賃金で就労していた夫と全期間専業主婦であった妻の世帯)の受給する年金額(モデル年金額)が現役世代の平均賃金の50%を上回るような水準を確保する、とされているが、このようなモデル(片働きモデル)が前提とする世帯構造自体が、大きく変化してきていることに留意する必要がある。

老齢厚生年金には国民年金のような65歳未満への繰上げ支給の制度はないが、その代わりに、当分の間、60歳以上・65歳未満の者について特別支給の老齢厚生年金制度がある。この特別支給の老齢厚生年金制度については、1994(平成6)年の法改正により、定額部分の支給開始年齢は、性別と生年月日に応じて、60歳から65歳へと段階的に引き上げられてきたが、2000(平成12)年の法改正により、報酬比例部分の支給開始年齢も、60歳から65歳へと段階的に引き上げられることになった。それに対応して、60歳から年金支給開始年齢までの間について雇用を維持することを目的にして「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」が改正され、65歳までの雇用確保措置が義務づけられた[12]。もっとも、雇用確保措置の内容(雇用形態、賃金額等)については、労使間で自由に決めることができるので、賃金も従来の3分2、あるいは2分の1といった例も珍しくはない。

問題は、それ以上の年齢への年金支給開始年齢の引き上げの可否である。社会保障・税一体改革素案(政府・与党社会保障改革本部2012年決定)では67歳ないし70歳への引き上げが中長期的な課題として挙げられている[13]。定年制の廃止あるいは67歳ないし70歳への定年年齢の引き上げによるそれまでの雇用の確保が大前提になろう。

Ⅳ 保育所の整備などの就労支援策、「介護離職」の防止

保育所の整備は、共働き家庭の増加によってその需要は急増しているが、その利用関係自体は、社会福祉サービスの利用に関わる児童福祉の重要なテーマである[14]。その反面、子育てと雇用の、あるいは職業生活と家庭生活の両立支援自体は、労働法の課題でもあり、育児・介護休業法で、育児休業・介護休業の取得、不利益取り扱いの禁止、所定外労働の制限、深夜業の制限など種々の施策が設けられている。実際は保育士の確保、さらにその処遇改善、具体的には報酬の引き上げが大きな課題である。

最近大きな問題となっているのが「介護離職」の防止である。統計によれば、年間10万人に及ぶ介護離職者の存在が大きな問題となっている[15]。介護離職の中心層が40代から60代の働き盛りであることも問題を深刻化している[16]。病気等と同じように休職規定の整備が必要になるが[17]、育児休業制度に比べて、介護休業の取得は低調である。その理由としては、介護休業給付が育児休業給付と比較して低いこと介護休暇制度も利用しにくいことなどがある。介護の場合、育児とは異なり、将来的な予測がたてにくいことから、利用しやすいようにする細かい工夫が必要であろう。なお、法改正で介護休暇の半日単位の取得、介護休業の3回までの分割取得も可能となり(施行は平成29年1月1日)、介護休業の給付率は67%に引き上げられた。

Ⅴ 雇用保険と失業の予防

雇用保険の最も重要な役割は、いうまでもなく労働者(被保険者)の失業中に基本手当等の支給によりその生活を確保することにある。ここで「失業」とは、雇用保険上は「被保険者が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあること」をさす(雇保法4条3項)。失業自体は、労働者の転職・求職行動、景気変動、さらには産業構造の変化などに伴うある意味で不可避な社会的な事故であるが、その一方で、労働者の主観的な意思に左右されることもあるため、その明確な認定は必ずしも容易ではない。とくに雇用保険の場合、離職理由によって給付制限があり[18]、被保険者が「自己の責めに帰すべき重大な理由によって解雇」され、または「正当な理由がなく自己の都合によって退職した場合」には待期期間(雇保法21条)の満了後1カ月以上3カ月以内の間で公共職業安定所長の定める期間、基本手当は支給されない(雇保法33条1項本文)。

その一方で、雇用保険において失業者を出さない工夫がなされている。それが、雇用保険法の雇用安定事業(雇保法62条)として実施されているものである[19]。雇用安定事業は、景気の変動、産業構造の変化その他経済的理由によって事業主が事業活動の縮小または事業の転換等を余儀なくされた場合に、労働者の解雇を防止し、職業の円滑な転換を図るために雇用する労働者につき、休業、教育訓練、出向等を行う事業主に対して必要な助成・援助を行うもので、雇用調整助成金(雇保則102条の3)の支給を主たる課題としている。もっとも、雇用調整助成金には景気の変動、産業構造の変化等自体をどうこうする力はないので、構造的な不況に陥っている業種そのものを救済することはできないことを軽視すべきでない。場合によっては長期にわたる助成がかえって構造転換を阻害する危険も指摘される。あくまで対症療法にすぎないこと、急激な変化に対するショック・アブソーバーとしての機能にその役割を限定することが必要になると思われる。

このように雇用保険法は、その内容の点で、本来の社会保障法とは異なる性格を含んでおり、その全体すべてを一括して社会保障法に位置付けることは適切ではない。失業の予防・回避等失業そのものに対する対策は雇用保障法(労働市場法)として労働法に位置付けられるものである。

なお2011(平成23)年5月20日に制定された「職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律」による求職者支援制度は、雇用保険の被保険者資格を満たすことのできない者や雇用保険の基本手当を受給しても就職することができなかった者に、職業訓練を受講することを条件にしているが、職業訓練受講給付金の支給を行うことによって、職業訓練による技能の向上を通じて早期の就職を可能とする制度である[20]。雇用保険と生活保護との間を埋める制度として評価されている。

Ⅵ 生活保護と自立支援・ワークフェア

生活保護・公的扶助は通常、社会的な最低限度の生活を維持できない生活困窮者に対して、国がその責任において直接給付を行うことによって最低限度の生活を可能にする制度である。社会保険による所得保障は、傷病、障害、死亡(稼得活動を行っていた者の死亡)、老齢、労働災害、失業等の一般的な生活危険に対して定型的・標準的な給付を行うことによって受給者、その家族の生活を維持し、かれらが貧困に陥ることの防止を重要な目的としているが、そうした給付の対象としてあらかじめ想定されていない事態が生じることもあり、また、給付の対象となっている場合でも支給要件を充足しないため給付が行われないことは稀ではない。こうした事態によって最低限度の生活の維持が困難となった場合に対応するのが公的扶助の制度であり、わが国では生活保護がその機能を担っている。その意味で公的扶助は、国民生活の最後のセーフティネットとしての役割を担うものである。その財源は、もっぱら税金によって賄われる。

生活保護法4条1項が定めるように、「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用すること」を要件として行われる(補足性の原則)。この点で、近年大きな争点となっているのが「能力の活用」である。能力の活用にいう能力とは労働能力(稼働能力)をいうが、通常、就労して収入をあげるこという[21]。困窮者が労働能力(稼働能力)を有していても、実際にその稼働能力を活用する就労の場を得ることができたかどうかが問題となる。

この点、最近、生活困窮者の就労支援、就労の実現を考えるワークフェア、「メイク・ワーク・ペイ」といった言葉で、仕事に就くことにより社会的排除からの脱出を考える考え方が打ち出されてきていることが注目される[22]。「仕事に就くこと」の重要性はいうまでもないが、その場合の仕事の内容は、いわゆるディーセント・ワークに値するものであることが必要であり[23]、専門的な職業的知識、社会的に通用するエムプロイヤビリティの獲得こそが目指される目標になる。


脚注

  • [1] 社会保障制度審議会の1950(昭和25)年勧告は、社会保障について「疾病、負傷、分娩、廃疾、死亡、老齢、失業、多子その他困窮の原因に対し、保険的方法又は直接公の負担において経済保障の途を講じ、生活困窮に陥った者に対しては、国家扶助によって最低限度の生活を保障する」ことと定義している。社会保障の概念ないしその捉え方については、菊池馨実『社会保障法』6頁以下参照(有斐閣、2014年)、西村・水島・稲森編『よくわかる社会保障法』(有斐閣、2015年)1頁以下(稲森執筆)参照。
  • [2] とくに、「職業生活の中断と社会保障」の問題に関しては、同名のシンポジウムおよび一戸・水島・倉田・高畠・中野の各論文参照、社会保障法27号(法律文化社、2012年)99頁以下参照。
  • [3] もっとも、障害者の多くは、障害年金を受給して、それを基本的な経済的基盤としつつ、さらに雇用を得て生活を支えているのであり、この両者が生活の自立に大きな役割を果たしている。その点から中井宏監修・岩崎眞弓他著『障害年金というヒント』(三五館、2014年)、中井宏監修・岩崎眞弓他著『障害年金というチャンス!』(三五館、2016年)は、障害年金の受給について重要な示唆を与える。
  • [4] 非正規雇用の法的問題については数多くの論考があるが、水町勇一郎「非正規雇用と法」長谷部他編『現代法の動態』第3巻所収(岩波書店、2014年)29頁以下参照。非正規雇用者自体の社会保険加入の促進も大きな課題である。
  • [5] 疾病時の賃金保障を使用者が行う国(ドイツの賃金継続支払法)もあれば、社会保険で行う国(わが国の医療保険の傷病手当金)もある。前者について、水島郁子「ドイツにおける疾病時の賃金継続支払」季刊労働法172号(1994年)150頁。
  • [6] 『南山堂・医学大辞典(第18版)』によれば、リハビリテーションについては、何らかの理由で社会の戦列から離れた人が再び復帰する現象を広く意味する用語であり、刑期を終えて社会復帰するまでを意味することがあり、身体障害者等に対してその残存能力を最大に活用するという措置だけではない(南山堂、2001年)2179頁。
  • [7] ドイツのライヒ保険法の1925年の改正法によって、「職業援助」という形でリハビリテーションが初めて規定された。現在の社会法典第7編(労災保険)35条ではリハビリテーションという用語自体は使われていない(直訳すれば「労働生活への参加のための給付」である)が、内実はリハビリテーションである。なお同編1条2号には、補償(年金)に対するリハビリテーション優先の原則が定められている。
  • [8] 詳細は、厚生労働省労働基準局労災補償部労災管理課編『七訂新版労働者災害補償保険法』500頁以下参照。労災法29条1項1号の規定を受けて制定されている独立行政法人労働者健康福祉機構法12条1項7号において同機構の業務として、リハビリテーション施設の設置・運営が規定されている。
  • [9] リハビリテーションの法的検討については、稲森公嘉「医療保障法と自立─リハビリテーションの給付を中心に」社会保障法22号54頁以下(法律文化社、2007年)が詳細である。
  • [10] 水島郁子「傷病を理由とする労働生活の中断と社会保障法」社会保障法27号(法律文化社、2012年)120頁。なお各法分野でリハビリテーションの措置が規定されてくると、制度間(とくに医療保険と介護保険のリハビリ)をどのように切れ目なくつないでいくか、効果のなくなったリハビリをどのように見極め、無駄をどのように省くかといった課題が出てくることになる。稲森公嘉・前掲論文65頁等。
  • [11] マクロ経済スライドについては、堀勝洋『年金保険法(第3版)』(法律文化社、2013年)257頁以下参照。
  • [12] 山下昇「高年法上の継続雇用制度の導入・実施とその手続」『社会法の基本理念と法政策(河野正輝先生・菊池高志先生古稀記念論文集)』(法律文化社、2011年)203頁参照。
  • [13] 嵩さやか「所得比例年金の課題」『これからの医療と年金』(法律文化社、2012年)215頁以下参照。なお、国民年金(基礎年金)は現在、20歳から60歳までの加入であるが、これを65歳まで加入期間を延長することによる試算(所得代替率の変化)については、佐藤裕亮「公的年金の財政検証32」週刊社会保障2882号63頁参照。
  • [14] この点については、本沢巳代子・新田秀樹『トピック社会保障法(第10版)』(信山社、2016年)145頁以下(橋詰幸代執筆部分)参照。
  • [15] 総務省「就業構造基本調査」2012年。
  • [16] 和氣美枝『介護離職しない、させない』(毎日新聞出版、2016年)によれば、介護していることの「カミングアウト」で仕事が続けられる知恵・工夫等が述べられている(79頁以下)。
  • [17] 「介護」に対する社会的支援制度そのものは、社会保障法の社会サービスの領域であるが、就業規則等の改正・新設によって介護休職規定等を設けるのは労働法に属する課題である。なお、育児・介護休業法27条に事業主の努力義務規定として、妊娠・出産、育児、または介護を理由に退職した者の再雇用特別措置の実施についての規定がある。
  • [18] 丸谷浩介「失業給付における自発的な離職」『社会法の基本理念と法政策(河野正輝先生・菊池高志先生古稀記念論文集)』(法律文化社、2011年)118頁以下参照。
  • [19] 雇用保険の積極的雇用政策等、雇用保険立法時の議論については、労務行政研究所編『新版・雇用保険法(コンメンタール)』(労務行政、2004年)63頁以下参照。さらに八代尚宏「雇用保険制度の再検討」猪木武徳・大竹文雄編『雇用政策の経済分析』(東京大学出版会、2001年)225頁以下。もうひとつの柱が、能力開発事業であるが、この点については黒沢昌子「職業訓練・能力開発施策」猪木武徳・大竹文雄編・前掲書133頁以下が詳細である。
  • [20] 本沢巳代子・新田秀樹・前掲書117頁(根岸忠執筆部分)。
  • [21] 判例として、林訴訟・名古屋高判平成9・8・8訟務月報44巻9号1516頁、東京高判平成24・7・18「賃金と社会保障」1570号42頁等参照。
  • [22] 濱口桂一郎「EUにおける貧困と社会的排除にたいする政策」栃本一三郎・連合総合生活開発研究所編『積極的な最低生活保障の確立』237頁以下(第一法規、2006年)。濱口氏によれば、「EUのメイク・ワーク・ペイは、単に給付を切り下げて就労せざるを得なくするという考え方ではなく、まっとうな仕事に永続的に就くことこそが社会的の王道である考え方に立脚していることである。質の低い仕事に就いたり辞めたりを繰り返すことは社会的排除の悪循環を解消するものではない」とされる(同書272頁)。他に、石橋敏郎「生活保護法と自立─就労自立支援プログラムを中心として」社会保障法22号41頁以下(法律文化社、2007年)、布川日佐史「生活保護法における自立支援と稼働能力活用要件」社会保障法24号167頁以下(法律文化社、2009年)、岡部卓「生活保護における自立支援」社会保障法24号152頁以下(法律文化社、2009年)、丸谷浩介「生活保護自立支援プログラムの法的課題」社会保障法24号180頁以下(法律文化社、2009年)等。
  • [23] ディーセント・ワークについては、西谷敏『人権としてのディーセント・ワーク』(旬報社、2011年)参照。

参考文献

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  • 菊池馨実編(2012)『社会保険の法原理』法律文化社.
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  • 田中耕太郎(2016)『社会保険のしくみと改革課題』放送大学教育振興会.
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  • 堀勝洋(2004)『社会保障法総論(第2版)』東京大学出版会.
  • 増田雅暢(2003)『介護保険見直しの争点』法律文化社.
  • 吉永純(2011)『生活保護の争点』高菅出版.

2016年9月号(No.674) 印刷用(PDF:713KB)

2016年8月25日 掲載

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