非正規労働者の増大に関する要因分解

要約

大橋 勇雄(一橋大学名誉教授)

本論文では、日本での非正規労働者比率の上昇幅を、労働力の性別、年齢別、産業別の構成変化による構成効果と企業の雇用政策の変化による構造効果とに分解している。従来の多くの研究は、非正規比率を上昇させたと思われる特定の要因、たとえば需要変動の不確実性や情報伝達技術の進展などの影響を統計的に確認しようとしている。しかし、これらの研究からは非正規比率の実際の上昇幅のうちどれだけがどの要因によるものかがはっきりしない。分析の対象は第二次と第三次産業における役員を除く雇用者で、対象期間は2002年から2012年にかけてである。この間の非正規雇用者比率の上昇は、第一次産業を除いた場合で0.057である。データは、公表されている『就業構造基本調査』(総務省)の集計データを利用した。要因分解の方法としてSolow流とOaxacaBlinder流の分解があるが、本論では両者の違いを明示した上で、分解作業を行った。結果は両者ともに似ており、非正規雇用者の上昇率のうち、労働力の構成変化の効果は両者ともに36%程度、企業の政策変化の効果は、OB分解が46.3%、Solow分解が43.0%を説明している。さらに、本論では、Solow流の分解のもとに他の要素の効果をコントロールすることによって、各要素について個別に構成変化と係数変化の効果を算出している。この作業によって性と年齢、産業構造の各変化の間で、その役割にどのような差異があったかを検討できる。

2017年7月号(No.684) ●研究ノート(投稿)

2017年6月26日 掲載